LOGIN翌日、私は再び大聖堂を訪れていました。
家族の大反対がありましたけれど、なんとか旅立つ許可を得ています。幸いにも武術大会で何度も優勝していましたし、聖女というジョブは自衛に適している。何より、あと二年の命だと告げたこと。一人旅の許可は最後くらい好きなようにさせてやろうという意味合いがありました。
「幸運の女神セラ様、私はこれより旅立ちます……」
祈りを捧げるや、昨日と同じように幻想的な空間へと誘われます。
目映い輝きに目を細めていると、直ぐさま眼前にはセラ様が現れていました。「リィナ、気を付けていくのですよ? とはいえ、貴方は幸運の持ち主。心配など必要ありませんかね」
昨日と同じような話です。私自身に実感などありませんけれど、セラ様は私が幸運に恵まれていると今も考えている。
「そうだと良いのですけれど……」
「ふふ、貴方は侯爵令嬢ですよ? 一人旅が認められたのは貴方の幸運が巡り巡った結果です」
またもや後付けにも感じる理由が述べられています。
悪いと思いますが、私には運が絡んだ要素を見つけられない。だけど、セラ様が言うのなら、そうなのかもね。
「それでリィナ、貴方は王都へと急ぎなさい」
続いて私の目的が語られました。
叡智の女神マルシェ様の使徒と会うこと。でも、急げというのには理由があるのかしらね?「急がねばならないのでしょうか? マルシェ様の使徒になにか?」
「ああいえ、マルシェの使徒とは関係ありません。急ぐ理由は一つ」
どうやら、運命の鍵を握るマルシェ様の使徒は関係ないみたい。
セラ様は徐にその理由を口にしていく。「ルカ・シエラ・アルフィスが王都に向かっているからです」
えっ? ルカ・シエラ・アルフィスって、あのルカって子よね?
「ルカ様はもう動き始めたのでしょうか?」
私の方が先に動いていると考えていた。
勇者というジョブを奪った彼は貴族だというのに、もう旅立ったといいます。「ルカは不思議な魂です。深い青をしているというのに、女神は総じて彼に惹かれる。既に武運の女神もまた彼に魅入っています。こんなことを口にするワタクシですら、気になっているのです」
「いや、彼は不幸なのですよね? セラ様が気に入る要素なんて……」
「ワタクシの序列は低いですからね。ルカには見通せない資質があるのかもしれません。勇者の運命を背負っただけで、原初の三女神ネルヴァの気を惹くなんて不可能です。恐らくルカは見た目よりも、ずっと複雑な色をしているのでしょう」
意味が分からないわ。
悲運でありながら、他の能力も持っているってこと?「彼は青い輝きなのですよね?」
「間違いなく青でした。しかし、今や武運の女神ネルヴァは心酔しきっているのです。また悠久の女神ニルスが手を挙げたことからも、彼の輝きは白に近いはず。深すぎる青のせいで見えなくなっている可能性が高い」
昨日も聞いた話です。輝きを混ぜていくと白になる。絵の具とは異なっている不思議な話でした。
「エクシリア世界創世時に存在した武運の女神ネルヴァ、叡智の女神マルシェ、そして悲運の女神シエラ。三柱の女神はそれぞれ赤と緑と青なのです。後に緑と青が交わり空が生まれ、赤と青が交わって紫が生まれた。次に赤と緑が交わってワタクシの黄となったのです」
混ぜるほどに明るくなる。それが七柱女神の輝きにある法則らしい。
「最後に生み出されたもの。それこそが悠久の白。時を統べる悠久の女神ニルスが誕生し、エクシリア世界の七柱女神が揃ったというわけです」
最終的に現れた女神様。輝きの全てを混ぜ合わせた悠久の女神ニルス様は純白であるみたい。
「では、現状のルカ様が白色という可能性は高いのですか?」
私は聞いておかねばなりません。私の運命を背負うはずだった人。青き輝きが白に変貌したその意味を。
「ルカ・シエラ・アルフィスはあらゆる色を手にしているのだと思えてなりません。つまり七柱女神は全員が彼に魅入ってしまうことでしょう」
納得はできません。人は一つの色しか持たない。より輝いた者が女神様の加護を得る。エクシリア世界はそうやって安寧を保っていたはずだもの。
「複数の色を持っているなんて……。もし私が悲運の女神シエラ様に選ばれていたとしたら、この運命を簡単に変えられたのかもね」
他者の運命を奪うのであれば、私の運命は簡単に更新できたかもしれない。たらればでしかないけれど、私はそんな世界線について考えてしまう。
「それは無理よ。そもそもシエラは使徒の悲運を望んでいる。リィナが使徒になったとして、ディヴィニタス・アルマを授かることはない。他の加護を授かるだけで、彼女は貴方の壮絶な死を望むはずよ」
夢見ただけだというのに、完全否定されてしまった。
まあ、そうか。聞く限りにシエラ様はかなり厄介な性格をしている。ルカという男の子は気まぐれで生かされただけ。より悲運を望んだ彼女の思いつきに振り回されているだけだもの。
「現状は武運の女神ネルヴァの助力が得られません。しかし、ルカ本人はまだ貴方に手を貸してくれると考えます。リィナは急いで王都に向かうこと。マルシェの使徒との接触を後回しにしてでも」
「本当ですか? ルカ様はどうして私に手を貸してくれるのでしょう?」
問いを投げて直ぐに私は顔を赤らめた。
だって、その理由は既に聞いたんだもの。彼が私のことを好きだって……。「運命は急に切り替わるものではない。まだ貴方のために自害した運命は消え去っていないのよ」
私は絶句していました。
ルカという男の子は勇者になったのです。セラ様は世界の安寧のために動くべきだというのに、どうしてか世界が勇者を失うような話をしています。「勇者に自害させるおつもりでしょうか!?」
そんなことは望んでいない。世界と比べたら、私の命なんて塵にも等しいもの。勇者を差し置いて生きる価値が私にはない。
「流石にディヴィニタス・アルマの使用は禁じられているでしょう。しかし、身代わりにならなくても、勇者は戦闘や対外的な交渉でも心強い味方となります。リィナに恋心を抱いている今のうちに取り込んでしまいなさい」
「こここ、恋心ですか!?」
思わず赤面してしまう。
会ったこともないというのに、セラ様の意見はルカという男の子が私を好きだという話で一貫していました。私は二年と生きられない身体なのに。そういえば婆やが話していた。男と女は見えない赤い糸で結ばれていると。自然と手繰り寄せた結果、最終的に結ばれるんだって。こんな今もルカ様と私は赤い糸で……。
「リィナ、人生は一度きり。短くても長くても一度しかないのです。ルカは美の女神イリアでさえも興味を持った男の子。きっと楽しい旅になるはずですよ」
「ちょちょちょ、待ってください! 私はまだ男女交際とか……」
「会えば分かるはず。気に入らないのであれば、一緒に行動しなければいいだけ。運命を足枷と考えるべきじゃない。自信を持って接したらいいわ」
セラ様は私の背中を押していました。
まあ確かに。好きなだけ足掻いてやろうと考えていたんだもの。人生の残りを憂えるよりも、今を謳歌すべきかもしれない。
婆やだって若い頃は派手に遊んだと語っていました。
私自身は取っ替え引っ替えなんて嫌ですけど、生まれてからずっと世話をしてくれた婆やの性的武勇伝は格好いいとすら思います。まあ、生き様としてですけれど。「分かりました! ルカ様と仲良くなってみます!」
「ワタクシ自慢の使徒だもの。きっと気に入ってもらえるはずよ」
言ってセラ様の姿が薄くなっていく。
使徒としての指針に難しい話はなかった。王都へ急ぐこと。加えてルカ様に会うこと。
私は単純明快な目的を脳裏に繰り返しながら、大聖堂を去って行きます。素敵な男の子ならいいな。
魂の色と同じように人生を輝かせてくれたならと、私はまだ見ぬ彼に思いを馳せていました。初めてのレベリングは俺とミリアを除いて上手くいったらしい。 結局のところ、ミリアは帰路もろくに経験値を得られず、レベルアップは僅かなものであった。 本日は授業の初日。レブナント教官が騎士候補生を集め、壇上で話をしている。「諸君、昨日はよく休めただろうか? 私が主に実技を担当するレブナントだ。始めに言っておくが、騎士学校では身分を加味しない。全員等しく扱うことになり、厳しい言葉も投げかけるだろう。耐えられないのであれば、さっさと国へ帰ることだな」 当然のこと俺も同様の扱いを受けることになる。これは教官が職務を全うするために必要な決まりごとだし、仕方のないことだ。「まずはクラスを決定しなければならない。剣技、魔法、支援の三つを計測し、適したクラスを選んでくれ。希望は聞くけれど、望み通りにならない場合もある。クラス分けは結果を加味して、教官が決定を下す」 適正はジョブに左右されることが多分にあるけれど、ジョブではなく計測数値から判断してくれるという。「まずはコーネル・バリウス! 剣技からだ」 どういう順番なのか分からないが、最初に名を呼ばれたのは皇国民でも王国民でもない。 コーネルは直ぐ北にあるバリウス帝国の皇子様だった。なぜ俺が彼を知っているのかというと、コーネルは俺のルームメイトだったからだ。「コーネルのやつ、初っ端とはついてないな……」 他国の皇子と聞いて我が侭な人間という予感を覚えていたのだが、そんな懸念は杞憂に終わっていた。 実際のコーネルはとても腰が低い。簡単に言うと、めちゃくちゃ良い奴なんだ。第三皇子という微妙な立ち位置も彼が控えめな要因だろうと思う。「始めます!」 剣技は魔道具に全力で打ち込むだけ。瞬時に威力を数値化して、適性を計ることができた。 ゲームでは少しも名前が出て来なかったコーネルなんだが、俺は心の中で密かに応援していた。彼が使える兵であるようにと。「でやあああっ!」 気合いを乗せたコーネルの一撃。ドスンと重たい音が鳴り、瞬時に数値が浮かび上がる。【169】 えっと、なんだ……? 凄いのかどうか分からん。 単なるダメージ量であるのなら、ゲームにおいてはかなりショボい。危険度七等級のゴブリンの体力が100程度なのだから。「うむ、なかなかの威力だ。魔法力の測定に行くか? それとも剣術科にするか?」
俺とミリアはフィオナよりも先に待ち合わせの地点へ到着していた。 ここまでミリアのレベルは5しか上がっていない。 俺が致命傷を与えているのだが、最後の一押しができず、先に魔物が息絶えてしまうからだ。「想像以上にキツいな……」 このままではレベル100で覚える最大級のスキルなんて何年かかるか分からない。リィナにはそのような時間がなかったというのに。 ちょうど二人きりだ。俺はミリアと腹を割って話をするべきかもしれない。「なぁ、ミリア……」「ななな、何でしょうか、殿下……」 ミリアの生い立ちは聞いた。 彼女は没落貴族であって、皇家の好意で後宮勤めを許されたらしい。本来なら騎士学校に入れるはずもなく、人知れず人生を全うしていたことだろう。「自分の運命を恨んでいるか?」「運命? それって、あたしの家のことでしょうか?」「ああいや、家だけじゃない。今まで生きてきた全てに関してだ」 俺はとんでもない要求を投げようとしている。 ぶっちゃけ彼女の人生は最悪を脱したところだし、これから先も上昇し続けていくことだろう。這い上がったばかりであって、そのような質問は愚問に違いない。「恨みとかないです。残念ながらお父様は借金を返済できずに、所領を失ってしまいましたが、あたしは今輝いていると思うのです。愚者の女神ルシアン様は適当に頑張れば良いと仰ってましたけれど、あたしはできるだけ足掻いてみたくなっています」 まあ、そうだろうな。 今は希望しか見えていないはずだ。侍女として騎士学校に入るには、普通ならば伯爵家以上が求められる最低ライン。没落貴族のミリアが選ばれるなんて、何度人生を繰り返そうがやってこない幸運なんだ。「今が楽しいか?」「どうして、そういうこと聞くのです? ひょっとして、あたしに恋しちゃったとか? いやでも、愛人ですよね? あたしは身分が備わっていませんし」 そうじゃないよ。俺が求めているものはそれじゃないんだ。 意図が伝わらないのなら、はっきりと言おう。俺が求める最低な要求について。「君の加護をくれないか?――」 俺はどこまで自分中心なんだろうな。 臆面もなく、人生を要求しているなんて。今を謳歌している若き女性に対して、輝かしい未来を奪おうとしている。 ポカンとした表情のミリア。流石に理解できなかったのかもしれない。彼女は
「単なる一目惚れですわ」 まあ、でしょうねぇ。 ルカ様は見た目と言動が一致しない人ですけど、一目見て恋に落ちる女性は多いかと思います。フィオナ殿下も例に漏れず、ルカ様を一目見て気に入られたみたい。「胸が高鳴りました。わたくしはようやくイリア様のご要望にお応えできると確信したのです。わたくしが愛に溺れる様を見ていただけると直感しました」「えっと、美の女神イリア様はそういったことをご所望なのですか?」「そうなのです。わたくしが殿方から寵愛を受ける様が見たいと常々仰っておられますの。結果的にまだ見せられておりませんけれど」 ひょっとすると私の幸運が勝っているからかもしれない。 彼女が婚約破棄に至った理由に私は関与している可能性がある。「そうでしたか……。申し訳ございません」「いえいえ、わたくしは現状を楽しんでおりますの。好きな殿方に振り向いてもらいたい。このような感情は初めてですし、とても新鮮に感じられておりますわ」 本当にできたお人ですね。 私であれば嫉妬で頭がおかしくなりそうなのに、フィオナ殿下は楽しんでおられると言います。授かった美貌からの余裕かもしれませんけれど、私には真似できそうもありません。「あの……、もしもルカ様が私の運命を背負ったとすれば、どう思われますか?」 何を聞いているのかな。 どうしてか私はずっと懐疑的に感じていた話を口走っています。「リィナ様、未来は誰にも分かりません。その未来については、わたくしもイリア様から伺っております。非常に危うい状態にあるのだと……」「知っておられましたか。ルカ様には前例があるそうです。ご存じでしたか?」 私の話には首を振られています。どうやら、セラ様に聞いた話をフィオナ殿下は知らされていないようです。「実はこの世界の現状はルカ様が作り出したそうです。彼は行き詰まった末に、世界の改変を選んだ。信じられないでしょうけど、ルカ様は元々子爵家のご長男であったと聞いています」「はい? ルカ殿下は第二王子様ですよね?」
私とフィオナ殿下は二人して森へと入ります。 最初に水精霊の雫をかけてもらいましたので体調も完璧です。しかし、本当に殿下は美しい人でして、慈愛の心まで持ち合わせているのですから最高の姫君だと思います。 フィオナ殿下のレベルが二つ上がったところで休憩中。恐らく私の身体を気遣ってくれているのでしょう。「リィナ様は聖女であられますのに、剣を持って戦われるのですね?」 フィオナ殿下が水分補給をしつつ言いました。 ああ、それね。私だって祝福の儀を受けるまで聖女になるだなんて考えもしなかったんだもの。健康のために始めた剣術が意外と面白くて、今でも続いているというだけです。「女性らしくなくてすみません……」「ああいえ、そういう意味では! 頼りになると考えていたのですわ」 聞けば、この組分けには不安を覚えていたみたい。まあ聖女と精霊術士だけで黒山に入るのは流石に躊躇するところですよね。「しかも、本当にお強い。わたくしの見せ場がなくなってしまいますわ」「ルカ様のおかげです。レベリングに付き合ってもらいましたから。今はソロでも危険度三等級くらいなら戦えます」 ルカ様がいなければ、こうはなっていません。 本来、聖女というジョブは力に長けていませんし、私の強さは極端に上がったレベルのおかげなのですから。「ルカ殿下は本当に真っ直ぐなお方なのですね……」「ルカ様は芯をしっかりと持っておられます。私の病気を知っていたとしても、使徒としての使命を忘れない。あの方はきっと世界を救う。誰にも負けない信念をお持ちなのですから」「目的はわたくしも伺いました。ですが、信念以外にも感じますの。ファイアードラゴンに襲われたわたくしたちを逃がしてくれたのです。あの場面はわたくしたちを切り捨てても良かったと思います。仮に世界を救うことを第一としているのなら」 ルカ様はそういう人ですからね。 誰にでも手を差し伸べてしまう。彼は身の危険など考慮できない。危機にある者を見つけたのなら、救うことしか考えていないの。「ルカ様のアレはお人好しです
二手に分かれての登頂。八合目で落ち合う約束なのだが、出発点は明確に異なっている。「さてミリア、お前はその短剣で戦うのか?」 まず気になったのはミリアの武器である。かつて包丁で戦ったことのある俺だから、余計に気になってしまうのだ。 なぜなら短剣は扱いやすいけれど、致命傷を与えるのに不向き。レベル上げという縛りにおいて残念な効果しかなかった。「長剣は重いですし……」 こんなときミリアが男であればと考えてしまう。 残念ながら愚者の女神の使徒は女性であり、長剣を振り回すほどの力がない。「じゃあ、錬成してみろ。お前ならできるはずだ」「錬成ですか?」 俺はアイテムボックスから、魔将軍マステルの亡骸を取り出す。錬成素材としては最上級と言えるものだろう。「これは俺が討伐した魔将軍マステルの亡骸。腕を切り落とすから待ってろ」 長剣として錬成するのに、全てを使う必要はない。 俺はとりあえず右腕を切り落として、ミリアに手渡す。 流石に躊躇っていたけれど、王子殿下が手渡すものを拒むなんてできなかったのだろう。「レベル20であれば等価錬成を覚えているはずだ。手持ちの小剣とこの素材を使って長剣を錬成して欲しい」 実をいうとゲームにおいて俺はミリアをレベル50までしか上げていなかった。彼女が加護として授かったスキルですら俺は覚えさせていない。 未知なる部分が多かったものの、等価錬成は回復薬を大量生産するのに役立っており、突出した力はなくとも重宝するスキルであった。「分かりました。初めてですけど頑張ってみます」 小剣とマステルの右腕を並べ、ミリアはスキルを行使する。上手くいけば素材に応じた長剣ができあがることだろう。「等価錬成!」 即座に錬成陣へとアイテムが吸い込まれていく。 輝きを発したそれは次第に光を失い、錬成結果が明らかとなる。「あれ……?」 錬成陣に残ったのは真っ黒なアイテムであった。既に短剣でもない。黒く澱んだ何かである。
準備を済ませたフィオナたちとロビーで合流。俺たちはレザルの街をあとにし、国境付近にある黒山へと馬を走らせていた。「フィオナ、馬に乗れたんだな?」「わたくしは戦うと決めてから全てに取り組みましたの。戦場にて必要なことを精一杯にこなしてきました」 俺が死んだものと考えていたフィオナは必要と思われる全てに努力してきたらしい。 正直に助かっている。もしも彼女が馬に乗れなければ、誰かが後ろに乗せる必要があり、それは俺である可能性が高かったからだ。 美女にしがみつかれることは男冥利に尽きるけれど、リィナの嫉妬をその身に浴びるのは生きた心地がしないだろうし。「あとミリア、初めまして。君は戦闘に長けていないだろうけど、有能な加護を持つ者だ。申し訳ないけれど、強くなってもらう」 異なる世界線で会っていたけれど、フィオナとも初対面となっていたのだし、恐らく矛盾を生まぬように改変されているはずだ。「ルカ殿下、初めまして。あたしはただのメイドだったのですが、女神様に加護を授かっていたみたいです。世界を救う使命があるのだとか……」 まあ困惑するだろう。 一応は貴族であるはずなのだが、ミリアは洗礼も祝福も受けていない。三女であったことも原因なのだろうな。「戸惑うだろうけど、俺は君が優秀な錬金術士になれると聞いている。期待しているぞ?」「ははは、はい殿下!?」 他にも気になる話が俺にはあった。 どうせ一時間は馬を走らせる必要がある。この機会に聞いておこうか。「それでフィオナ、フィンはどうなっている?」 祝福を受けたフィオナであれば何か知っているだろう。 皇国側最後の英雄。時空術士フィン・ニルス・クロノリアはやはり騎士学校に入学していない。「ニルス様の使徒でしょうか? しかし、イリア様は教えてくれなかったのです。なので、騎士学校にはミリアだけを連れております」 まあそうだろうな。女神たちは同じ目的を持っているというのに、協力し合っているという様子はないのだし。「ただニルス様はルカ様を狙っ







